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在日朝鮮人も含めた特定失踪者の拉致認定とは?

特定失踪者
05 /27 2019
在日朝鮮人も含めた特定失踪者の拉致認定とは?

特定失踪者の家族会と、特定失踪者問題調査会などが24日、
東京都内で、問題解決を訴えて初のデモを行ったそうです。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190524-00000569-san-soci
「特定失踪者家族が初のデモ 「心込めた調査」訴え」
「北朝鮮による拉致の可能性が排除できない「特定失踪者」の家族会と、
支援団体の特定失踪者問題調査会などが24日、
東京都内で、問題解決を訴えて初のデモを行った。
全国各地にいる失踪者の家族が東京に集まるのは、
集会が開かれた平成22年以来約9年ぶり。
 同日午前、千代田区の日比谷公園前を出発した隊列には、
失踪者家族や支援者、
政府認定被害者の増元るみ子さん(65)=拉致当時(24)=の弟、
照明さん(63)も含め約200人が参加。
失踪者の顔写真を首から下げ、
政府に「被害者救出のためにすべての手段の動員を」などと求めた。
 政府認定の被害者は帰国者5人を含め17人だが、
警察庁はこれまで882人を特定失踪者とし、
全国で拉致の疑いを否定せず捜査・調査を継続している。
調査会が「拉致濃厚」とみている失踪者もいるが、
政府は認定に慎重だ。
国内で安否が判明することがあり、
「北朝鮮に『日本の主張はずさんで信用できない』と反論される恐れがある」
との判断があるとされる。
 認定をめぐる認識の差とは無関係に、
どの家族にも高齢化の波は押し寄せている。
都庁前で開かれた22年の集会には約70家族が参加したが、
今回のデモは20家族ほどにとどまった。
亡くなったり体調を崩したりしている人は多い。
 昭和47年に失踪した生島孝子さん(77)=失踪当時(31)=の姉、
馨子さん(79)は
「政府は特定失踪者のことも心を入れて調べてほしい」と話した。」

この記事の写真で、
菅官房長官兼拉致問題担当大臣が
特定失踪者家族会の大沢会長から、
要望書を受け取っています。

その要望書の内容が、
特定失踪者問題調査会の荒木和博代表のブログに掲載されていたので、
読んでみました。
「本日の要請文書」
araki.way-nifty.com/araki/2019/05/post-3e2cea.html

そして、そのなかの一項目に目を引かれました。
「3、在日朝鮮人も含め特定失踪者の拉致認定を進めてください」

「在日朝鮮人を含め」とはどういう意味なのか?
疑問を感じました。
該当箇所を転載してみます。

「3、在日朝鮮人も含め特定失踪者の拉致認定を進めてください
 先日、今回のデモ、要請や集会に合わせるかのように
警察は日本国内で発見された特定失踪者について発表しました。
私たちは拉致でなく日本国内で所在が確認されるなら
それに勝るものはないと考えています。
しかし一方、警察は「拉致でない」
というケースを強調するのは熱心なのに、
肝心の拉致認定は松本京子さんが
平成18年(2006)11月に認定されて以来
この13年間ただの1人もされていません。
私たちには「認定の有無にかかわらず」との文言が
逆に認定をしないための言い訳になっていると感じられます。

 警察は「北朝鮮側に反論する材料を与えることがないよう、
慎重に対応している」と言いますが、
青山学院大の福井義高教授も統計学による分析で
「拉致濃厚な失踪者とそれ以外の失踪者を合わせて、
少なくとも100人程度が北朝鮮に拉致されたことは
合理的な疑いを超える事実である」と述べています。
被害者が100人以上であれば、
現在の「17人」との差は単なる誤差にとどまるものではなく、
大幅な違いがあること自体が責任問題と言えます。
そうでないことを期待しますが、
何人かの拉致被害者も亡くなった可能性があります。
救出という観点からすれば、
「慎重」にやるのと多少の誤差があっても
全体像に迫るのとどちらをとるべきかは明らかです。
あわせて今後、認定されていない拉致被害者が
北朝鮮で死亡していた場合はどの省庁の誰が
どのように責任をとるのかも明確にされるよう要望します。

 また、高姉弟が警察断定なのは朝鮮籍であるためですが、
母親である渡辺秀子さんは日本人です。
表に出ていないだけで帰還事業で北朝鮮に渡った人々以外に
在日朝鮮人で拉致された被害者も相当数いることは明らかです。
調査会のリストでは在日のみならず台湾人の沈静玉さんもいます。
支援法を改正するか、認定自体を別の法体系で行うなどして、
日本国内から拉致された被害者については
国籍の別なく対応してもらうよう要望します。」

これは見過ごしにできない内容です。
批判することに致します。

① 「先日、今回のデモ、要請や集会に合わせるかのように
警察は日本国内で発見された特定失踪者について発表しました。
私たちは拉致でなく日本国内で所在が確認されるなら
それに勝るものはないと考えています。」
⇒確実な証拠もなく、北朝鮮の拉致呼ばわりしていたのですから、
まずは北朝鮮に対して「この件についてだけでも」謝罪をしたらどうですか?
それを「今回のデモ、要請や集会に合わせるかのように」
という“陰謀説”は、とんだ逆切れではないでしょうか。

ところで、荒木氏のブログでは、
その先日の日本国内で発見された特定失踪者についての記事も掲載しています。
「戻って来た人」
araki.way-nifty.com/araki/2019/05/post-a91d6b.html

正直言いまして、このように
「何が何でも北朝鮮のせいだ!」
というバイアスを持った人物が一番なってはいけないのが、
「北朝鮮に『日本の主張はずさんで信用できない』
と反論される恐れがある」ため、慎重さが求められる、
特定失踪者問題調査会の代表なのではないですか?
「救出という観点からすれば、
「慎重」にやるのと多少の誤差があっても
全体像に迫るのとどちらをとるべきかは明らかです。」
など大雑把なことを言う人は、即刻辞めて頂きたい。

② 「拉致認定は松本京子さんが
平成18年(2006)11月に認定されて以来
この13年間ただの1人もされていません。
私たちには「認定の有無にかかわらず」との文言が
逆に認定をしないための言い訳になっていると感じられます。」
⇒当ブログで以前掲載した
「特定失踪者問題調査会という組織」という記事の中で、
荒木和博氏自身が書いた「「拉致認定」は本当に必要なのでしょうか」
という文章を全文掲載しました。
serenityprayer323.blog.fc2.com/blog-entry-59.html

荒木氏は、2013年4月6日に、
「調査会の目標とするところは拉致認定ではなく
拉致被害者救出である」と、
特定失踪者の拉致被害者認定を日本政府に求めることを
積極的な目標とはしないと言っているのです。

にも関わらず、今回は政府が特定失踪者を
政府認定拉致被害者として認定しないことを問題視しています。
この矛盾した言動。
調査会は「拉致されたかもしれない失踪者」を
「拉致が確実な被害者」にしていく活動を自らは放棄しながら
「政府が認定しないこと」の責任を問うているのです。
誤った方針変更をした責任を、今すぐとるべきなのは調査会でしょう。

③ 「青山学院大の福井義高教授も統計学による分析で
「拉致濃厚な失踪者とそれ以外の失踪者を合わせて、
少なくとも100人程度が北朝鮮に拉致されたことは
合理的な疑いを超える事実である」と述べています。」
⇒「統計学による分析」から得られる人数が100人程度であり、
それを調査会が根拠として採用するなら、
自らの出している400余人や、「約900人」の根拠としての
警察庁の出している822人という数字は採用すべきではないでしょう。
 ※「統計学による分析=事実」となるのでしょうか?
 統計学についてはよくは判らないのですが、
 統計による分析とはあくまで、事実に近い推測。
 多くのデータからの平均値、集約したものから見て取れる結果からの
 あくまで推測でしかないものだと思うのですが。
 福井教授という人が、
 「100人程度が合理的な疑いを超える事実」であると
 言っていて、それが仮に現在有力な「事実」であるなら、
 警察庁の出している882人という数字は何なのか?

それを追認している調査会は、自分にとって都合のいい数字を
「専門家の意見」として、都合のいい時だけ活用し、
世論を煽っているだけと言えます。

④ 「表に出ていないだけで帰還事業で
北朝鮮に渡った人々以外に在日朝鮮人で
拉致された被害者も相当数いることは明らかです。
調査会のリストでは在日のみならず台湾人の沈静玉さんもいます。」
⇒「在日朝鮮人で拉致された被害者も相当数いることは明らか」というなら、
その根拠・具体例を示す必要があります。
それをせずに
「在日のみならず台湾人の沈静玉さんもいます」というのでは、
それは意図的な印象操作です。
まさか高姉弟が「相当数」の根拠でしょうか?

又、この要望書の前文部分にも、
見過ごすことのできない箇所があります。
「拉致被害者の救出には最終的に現体制が変わることが必要であり、
それは北朝鮮の人権問題解決にも重要な意味を持つと考えます。
拉致被害者も含め北朝鮮にいる全ての人々が
自由と平和を享受できるように、
日本の主体的な役割が求められているところです。」

先日当ブログで
「5/19 「全拉致被害者の即時一括帰国を実現せよ!
国民大集会」報告(続き)」という記事を掲載し、
荒木和博氏の極めて好戦的な言動を問題視しました。

荒木氏は国民大集会の壇上でこう言いました。
「この間北朝鮮の中で膨大な人たちが、
日本人の拉致被害者もそうですし、それから在日朝鮮人の帰国者、
その日本人家族もそうですし、そしてまた、
今北朝鮮に住んでいるごく普通の二千数百万の大部分が
被害者である人たちが、まさにですね、死んでいっている訳です。
その人たちのことを考えて、私はあえて言いますが、
復讐をしない訳にはいけない。
絶対にかたきをとってやる、という風に思っております。」

併せて読んでみると、
その余りにも好戦的・侵略的な傾向は一目瞭然であり、
「北朝鮮の人権問題」
「拉致被害者も含め北朝鮮にいる全ての人々が
自由と平和を享受できるように」
「在日朝鮮人を含めた特定失踪者の拉致認定」
などはその意図を隠すための、
親切めかした口実に過ぎないことが見て取れます。

「北朝鮮による拉致の可能性が排除できない」特定失踪者という、
最初から拉致被害者と同一視すること自体に無理のある対象を、
あたかも拉致被害者そのものであるように言い募り、
「1000人近い拉致被害者」のイメージで
在日コリアン社会に甚大なるプレッシャーを与え続けてきた、
まさにそのご当人が、
「在日朝鮮人を含めた特定失踪者の拉致認定」などと言って、
自らの好戦的・侵略的意図の根拠の一つにしようとするその偽善的姿勢は、
非難されてもしかたのないものではないでしょうか。

「特定失踪者問題調査会や、
その代表の荒木和博氏なんか誰も知らないし、
何の影響力もないよ。何をむきになっているのだ。」
という人がいるかもしれません。

しかし、そうであるなら今話題の丸山穂高議員も、
特別な影響力の持ち主ではありません。
しかし国会議員の立場で、戦争を望むような発言をしたため、
多くの人の非難を浴びています。
当然だと思います。

一方、特定失踪者問題調査会代表の荒木和博氏はどうでしょうか?
19日の国民大集会で、多くの政権与党の国会議員も臨席している場で、
戦争を示唆する発言を公然と行い、拍手喝采を浴びています。
そして日本政府の中枢がその役職を兼務している拉致問題対策本部と、
ラジオ放送やコンサートなどしきりと共催しています。
国会議員の中から、「彼の好戦的な言動はいかがなものか」
というような苦言など、ただの一度もされたことはありません。

拉致問題ではよく「罪を憎んで、人を憎まず」という言葉が言われます。
(最近は罪も人も憎む発言が相次いでいますが)
私は別に調査会へも荒木代表個人にも恨みも憎しみも持っていません。
しかし拉致問題・北朝鮮の人権問題を口実に、
この日本を戦争に引き込もうとするような言動をするのであれば、
その罪は憎まなければなりません。
そして、そのような言動を許す土壌が
日本政府の中にあるのであれば、それを白日下にさらすことは、
この時代に生きる一個人としての義務であると考えます。

この記事を読まれた方。
このままでいいのか、
ご一考をお願いいたします。

そして特定失踪者の家族の皆さん。
特定失踪者とは、
「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者」のことである、
という原点にかえり、
荒木和博氏個人の好戦的志向による
ミスリードに惑わされないようにして下さい。

実際に特定失踪者であるご家族が、真の拉致被害者であった場合、
救出する方法は戦争・武力行使などではありません。
北朝鮮での居場所も判らないのです。
北朝鮮で家族を作っているなら
その人達を見捨てて、自分だけ帰国をするわけにも行かないでしょう。
まして、戦争、武力で救出となれば、
被害者の生命の安全は完全に保証されるものではないのですから。

命を救う手段は、平和的交渉にしかないのです。
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続続 特定失踪者問題調査会という組織

特定失踪者
01 /05 2019
続続 特定失踪者問題調査会という組織

11月15日に
「続 特定失踪者問題調査会という組織」という記事を掲載しました。
その後半部分で、11月12日に調査会代表の荒木和博氏と特定失踪者家族が、
菅官房長官兼拉致問題担当大臣に面会し、要請文書を手渡したことに触れ、
その内容についての問題点を指摘しました。

その要請文書への回答が、12月10日付で
拉致問題対策本部事務局から届いたそうです。
araki.way-nifty.com/araki/2018/12/news2886301221-.html
全文は荒木氏のブログに掲載されているのですが、
とにかく分量が多く、内容も読みやすいとは言えないので、
ポイントとなる部分だけ抜き出し、
私達なりの見解を加えて掲載したいと思います。

1、拉致認定について
<要請文書>
 政府認定拉致被害者は
松本京子さんが認定されて以来11年間1人も増えておらず、
高姉弟を入れても19人に過ぎません。
国連の文書にはNGOの試算としてではありますが、
「100人以上」と書かれています。
青山学院大の福井義高教授も
「拉致濃厚な失踪者とそれ以外の失踪者を合わせて、
少なくとも100人程度が
北朝鮮に拉致されたことは合理的な疑いを超える事実である」
と述べています。
それが正しければ19人との差は単なる誤差にとどまるものではなく、
大幅な違いがあること自体が責任問題と言えます。
政府は拉致被害者の全体像を現在の19人+αと考えているのか、
あるいは100人以上と考えているのか、
それとも警察の発表している900人弱程度と考えているのか、
それを明らかにしていただきたくお願いします。

<政府からの回答>
 政府は、これまでに17名を
北朝鮮当局による拉致被害者として認定しておりますが、
この他にも、日本国内における日本人以外(朝鮮籍)の拉致容疑事案や、
北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると認識しております。
平成30年11月1日現在、883名に関して、
北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者として、
国内外からの情報収集や捜査・調査を続けております。
 拉致被害者の認定については、
北朝鮮側に反論する材料を与えることがないよう、
慎重に対応しているところでありますが、
政府としては、拉致問題の全面解決に向けて、
拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、
全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くすとともに、
拉致に関する真相究明及び拉致実行犯の引渡しを
引き続き追求してまいります。

<政府からの回答に対する、調査会の見解>
 「北朝鮮に反論する材料を与えることがないよう」というが、
もとより国際的にも嘘をつき続けてきた北朝鮮に対し
「反論の材料」などという言葉自体が責任の放棄であると言わざるを得ない。
また逆に、認定していなかった人が
今後拉致被害者であったと分かったときには
誰が認定しなかった責任をとるのか、
「国民に批判する材料を与えることがないよう」明確にすべきである。
「認定の有無にかかわらず」というのであれば、
政府のパンフレットの記載の大部分が認定被害者のことに費やされており、
しかも事実上の認定である高敬美・剛姉弟について
認定被害者と同じ扱いになっていないことも矛盾する。
「全力を尽くす」という言葉とこの間の結果の落差は明らかであり、
それを見直して新たな施策を講じるべきであると考える。

<私達の見解>
回答に対する見解の中に
「認定していなかった人が今後拉致被害者であったと分かったときには
誰が認定しなかった責任をとるのか」とありますが、
仮に認定していなかった拉致被害者が北朝鮮にいたとして、
そのことがどうして日本にいて「(北朝鮮にいることが)間違いない」
と断定できるのでしょうか?
情報収集活動も当然限界があり、どんな情報でも手に入る訳ではありません。
これは相当に無理のある理屈で、今後そのような責任を国民が問う事は、
考えられないことです。
特に北朝鮮からの報告書を受け取らない、
と救う会・認定被害者家族会は言っており、
調査会も特定失踪者家族会も国民大集会でそれに賛同。
同様の見解である、という現状があります。
もしそのような責任が問われるなら、調査会・家族会もその責任は免れない、
と言うべきです。

特定失踪者の認定については、
北朝鮮からの報告書を受け取らない状況において、
「国内外からの情報収集や捜査・調査を続けており」
「北朝鮮側に反論する材料を与えることがないよう、慎重に対応している」
と日本政府は言っています。
(11年かけて!)まだ慎重に捜査・調査している最中だ。
つまり、
(11年かけても!)拉致被害者であるともそうでないとも言えない、
と言っているのです。

政府が責任をとらなければならないのは、
にも関わらず、
「拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、
全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くす」
などと言っていることです。

北朝鮮が拉致していないと明言していて、
日本政府も拉致との確信が持てていないと明言している人も、
全員取り戻す、
と北朝鮮に聞こえるように公言しているのです。
どこが慎重に対応しているのでしょうか。
いやしくも政府の機関が、
このような支離滅裂な回答をすること自体が責任問題と言えます。

このように重要な「認定の有無にかかわらず」という言葉を、
まともに受け止めずに、
それを政府のパンフレットに記載という、
枝葉末節の問題に矮小化する調査会の姿勢は、問題視せざるを得ません。

更に、この項の要請は
「政府は拉致被害者の全体像を現在の19人+αと考えているのか、
あるいは100人以上と考えているのか、
それとも警察の発表している900人弱程度と考えているのか、
それを明らかにしていただきたくお願いします。」
であるはずです。
政府による回答を普通に読めば、
「北朝鮮に反論されることのない、間違いない拉致被害者の人数は17人です。
それ以外は未だグレーゾーンです。」
としか読み取ることができません。

その回答に正面から向き合い、それを受け入れることができないのならば、
専門の特定失踪者問題の調査会なのですから、
政府が入手していない、
特定失踪者が拉致被害者であることの
「北朝鮮側に反論する材料を与えることがない」動かぬ証拠を突き付け、
合理的な数字であるはずの、100人程度の認定を要求すべきです。

それを行わずに、些末な言葉尻のみを問題視してみせ、
「それを見直して新たな施策を講じるべきであると考える。」
などともっともらしいが、何も言っていないに等しいオチをつけるやり方は、
納得し難いものと言わざるを得ません。

3、自衛隊への任務付与について
<要請文書>
 拉致被害者救出のためにこれまで自衛隊には
ほとんど任務が付与されてきませんでした。
有事における邦人保護のため、あるいはその準備としての情報収集など、
できること、しなければならないことは少なくありません。
ぜひあらためて任務の付与をされますようお願い申し上げます。

<政府見解>
 政府としては、先般の平和安全法制の整備により、
新たに、自衛隊による在外邦人等の救出や警護などの
保護措置が実施できるようになったことは、
一歩前進であると考えております。
 自衛隊は、平和安全法制で可能となった保護措置や
各種の訓練についても順次実施しております。
 他方、自衛隊による救出活動には、国際法と我が国憲法上の制約があるため、
これ以上の自衛隊の活用には限界があることは事実ですが、
今後とも、政府全体として、
拉致被害者の救出のために何ができるかについて、
不断の検討を継続してまいります。

<政府からの回答に対する、調査会の見解>
 現在必要なのは検討ではなく準備、そして実行である。
特に地誌情報の収集などは自衛隊で行うのが最も適当であり、
直ちに進めるべきと考える。
また、北朝鮮に対する明確な国家としての意思表示のために
日朝交渉に制服自衛官を同席させる等の措置の実現も求めたい。

<私達の見解>
荒木氏・調査会・特定失踪者家族は、自衛隊の代弁者なのでしょうか?
地誌情報の収集を、国交正常化がなされていない国相手に自衛隊が行うのは、
重大な敵対行為なのでは?
スパイ衛星、あるいはグーグルマップで把握するつもりなのかもしれませんが。
戦争したいのでしょうか?

7、国内での協力組織・個人への取締りについて
<要請文書>
 北朝鮮の拉致は今後も行われる可能性があります。
日本国内の工作員・協力者は現在も行動しており、
韓国の親北勢力とも連携をして
公然・非公然にその活動を活発化させています。
この際あらためて北朝鮮に協力的な組織及び個人に対して厳しい取締りを行い、
可能な限り摘発をしていただきたくお願い申し上げます。

<政府からの回答>
 北朝鮮工作員による対日有害活動は、
我が国の国益を侵害するとともに、
国民の生命や身体に危険を及ぼすおそれのある
重大な問題であると認識しております。
引き続き、様々な情報収集活動を行うとともに、
違法行為に対しては、法と証拠に基づき厳正に対処してまいります。

<政府からの回答に対する、調査会の見解>
 「厳正に対処」するならそもそも朝鮮総聯を破産させるべきだと考える。

<私達の見解>
要請文書と政府からの回答のどこに、
「朝鮮総聯」と書かれているのでしょうか?
自分が明確に要請してもいないことを、
「回答に対する見解」で述べるのは、不見識きわまる態度ではないですか?
「それぐらい言わなくても分かるはず」というつもりなら、
別に朝鮮総聯の肩を持つつもりはありませんが、
朝鮮総聯の「日本国内の工作員・協力者は現在も行動しており、
韓国の親北勢力とも連携をして公然・非公然にその活動を活発化させている」
その明確な「違法行為」の証拠を提出するべきだと考えます。

以上10項目中、主だった3項目について、
かなり辛辣な見解を述べましたが、
この3項目を見るだけでも、共通して見えてくることがあると思います。

それは、
要請文書の内容と、政府からの回答と、回答に対する見解は、
全くかみ合っていない。
いや、
意図的にかみ合わせていない、ということです。

とにかく悉くずらしていて、
要請文書を出して、その回答をもらう前と後とで、何一つ進展がないように、
お互いに細工をしています。

そして調査会は、
「私たちは今後国会での審議や報道機関との連携など
様々な方法を用いて今回明らかになった問題点を正し、
拉致問題を進展させるために努力していく。」
などと政府顔負けの「美辞麗句」でお茶を濁している。

かつて萩生田光一議員が言った「田舎のプロレス」とは、
まさしくこのことではないでしょうか?
実際に北朝鮮にいるはずの拉致被害者そっちのけの、
「やってる感」をだすだけのプロレスショー。

荒木氏は、この一連のプロレス興行で、
おいしい思いしかしていません。
彼が拉致問題にいつまでも関わっていられるように、
「やってる感」だすだけのプロレスを続けるのは、
拉致問題の「プロ」として当然のことでしょう。
家族を拉致されている訳でなし、
それどころか自分の家族を養う飯のタネなのですから。
八百長がばれたところで、罰せられることはありません。
教授の地位も安泰。
あるのはメリットだけです。

しかし特定失踪者家族はそれにつきあっていていいのでしょうか?
あなたたちは家族を拉致されている「かも」知れないのです。
そして拉致問題の「プロ」ではありません。
それなのに「田舎のプロレス」に協力させられています。
もし「こんなの八百長じゃないか!」と問題になった時、
あなた方には逃げ場がありません。
「家族を拉致されているかもしれないのに、
家族そっちのけの八百長に協力するとは!」
あるのはリスクだけです
(これは西岡氏・島田氏と認定拉致被害者家族との間にも言えることです)

荒木氏には時間はいくらでもあり、身分は安泰です。
しかし特定失踪者家族は、一日一日リスクが増大する一方です。

どうすればいいのでしょうか?
一日も早く
「八百長はやめろ。
ちゃんと拉致被害者の救出という結果につながる、具体的な行動をとれ。」
と調査会と日本政府に詰め寄るべきでしょう。
そのための材料は当ブログの
「特定失踪者問題調査会という組織」
http://serenityprayer323.blog.fc2.com/blog-entry-59.html
「続 特定失踪者問題調査会という組織」
http://serenityprayer323.blog.fc2.com/blog-entry-68.html
「続続 特定失踪者問題調査会という組織」
に全てそろっています。


続 特定失踪者問題調査会という組織

特定失踪者
11 /15 2018
続 特定失踪者問題調査会という組織

先の「拉致問題と差別」では、拉致問題界隈でよく使われる
「拉致が最優先課題」というフレーズを特に問題視しました。

一方、同じく頻繁に繰り返される「拉致被害者の即時全員一括帰国」
というフレーズに関わる問題を、
9月30日掲載の「特定失踪者問題調査会という組織」
という記事で提起しました。
「一人からでも救出を」という方針を持つにも関わらず、
「拉致被害者の即時全員一括帰国」以外認めないという趣旨の
国民大集会に参加し、
異議さえ唱えない調査会会長荒木和博氏の矛盾を指摘したのです。

この矛盾について、荒木氏より回答らしきものが出てきましたので、
「続」というかたちで再度取り上げます。

まず、やや長くなりますが、前回記事の該当部分を再掲します。

「特定失踪者問題調査会が「1人からでも救出を」という方針を発表したのは、
わずか3か月前の6月29日。内容は以下になります。
araki.way-nifty.com/araki/2018/06/news276730629-f.html
「北朝鮮に対して「即時全員一括帰国」を求めるのは当然であっても、
100%の実現は不可能である。
ともかく可能なところから取り返し、
最終的に全ての拉致被害者の救出を目指すのが
現実的かつ妥当な方向であると考える。」とはっきり書いてあります。

それどころか、
「以上のような活動を具体的に行うが、
最後の1人まで取り返すためには
北朝鮮の中に入り調査を行わなければならない。
そのための官民合同調査団の結成に向けて準備を進める。
また、調査会独自でも陸路及び海路から北朝鮮へのアプローチを目指す。
ともかく情報が必要であり、
また現在明らかにできる情報は可能な限り明らかにすべきである。
これまでたびたび、北朝鮮側から日本政府に
拉致被害者・特定失踪者の情報が提供されたと言われており、
米朝の交渉の中でも提示されたとの報道がある。
政府は拉致問題を進展させようとするなら、
今あるリストを公表するよう求める。」とまで言っています。

にも関わらず、国民大集会で全会一致で賛同された決議文にはこうあります。
「我々が要求しているのは連絡事務所の設置でも、報告書や偽の証拠でもない。
認定、未認定にかかわらず全拉致被害者が
笑顔で家族のもとに帰ってくることだ。
だからこそ、金正恩政権に
全拉致被害者の即時一括帰国を決断させるという一点に
全精力を注ぐことが求められている。」
全く正反対の内容です。
荒木氏や大澤代表以下特定失踪者家族は
なぜこのような決議文に賛同できるのでしょうか?」

さて、当たり前の話ですが、この矛盾に気付いたの私達だけではありません。
長く拉致問題に真剣に取り組んでおられる方で、
荒木氏に矛盾を問い質す文書を送った方がいらっしゃいます。
先日、その文書と荒木氏によるそれに対する返信を、
人づてに見せて貰う機会がありました。
そこで、このブログに載せてよいか尋ねたのですが、
そのままのかたちでは困るということでしたので、
返信の骨子の部分だけ抜き出して掲載したいと思います。

荒木氏の言い分は以下のようになります。

・調査会の「一人からでも、できるところから」という方針に変わりはない。
・しかし、救う会・家族会の「拉致被害者の即時全員一括帰国」
に反対はしない。
・その理由は、北朝鮮への要求として「できるところから」
という訳にはいかないから。
・公的には「拉致被害者の即時全員一括帰国」を要求し、
現実的には「一人からでも、できるところから」作業していく。
・これに矛盾はない。

これを読んでどう思われるでしょうか?
原文そのままではないし、提供して下さった方に迷惑もかけられないので、
これ自体には論評はしません。
あくまでも公表されている方針に基づいて批判したいと思います。

荒木氏及び調査会は「一人からでも、できるところから救出を」と
「拉致被害者の即時全員一括帰国」が併存可能な方針だと主張しています。
かなり無理のある主張ですが、
そう主張するための材料は、6月29日の方針に既に挿入されていたのです。

方針には
「北朝鮮に対して「即時全員一括帰国」を求めるのは当然であっても、
100%の実現は不可能である。」とあります。
この時点で併存のための布石が打たれています。
なぜかといえば、即時全員一括帰国というのは、
全員かゼロ人か(all or nothing)の2つしか選べない方針であって、
パーセンテージなどありえない話だからです。
しかし、パーセント表示をすると、わずかに0.1%の可能性でも
ありはしないかと期待を持たせることはできそうです。

分かりやすくするため、仮に拉致被害者を100人だという事にしましょう。
「即時全員一括帰国」というのは99人帰すと言われても、
100人全員一括の帰国でなければ認めない、という方針です。
99人とりあえず帰国させるのであれば、
それは「拉致被害者の全員帰国」でいい話であり、
(残りの1人はいずれまたということも可能ですから)
「即時」「一括」をわざわざつける意味はありません。
「即時」「一括」をつけることが百害あって一利なしだからこそ、
私達は反対しているのです。
この方針では100人かゼロ人かの二者択一しかありえません。
そして現状ではこの仮の設定のように
100人という人数さえ出ていないのですから、
この方針では帰国者ゼロ人以外の結果はのぞめないのです。

そのような分かり切った事実をぼかすために
「100%の」という言葉が挿入されています。
普通どのように考えても
「北朝鮮に対して「即時全員一括帰国」を求めるのは当然であっても、
実現は不可能である。」であるはずが、
そこに「100%の」を挿入することで、
部分的には実現可能であるかのような幻想を
もたせる仕組みになっているのです。
まるで100度になると、水が水蒸気になるのだから、
30度のお湯から70パーセントの水と30パーセントの水蒸気を
取り出すことが可能であるかのように。

なかなか巧妙です、と言いたいところですが、
文章としては全然巧妙ではありません。
この理屈で説得される人は、一般社会にはほとんどいないでしょう。

荒木氏が巧妙なのは、説得すべき人間を絞り込んでいることです。
特定失踪者家族だけ、拉致問題関係者だけ、説得できればそれでいいのです。
そのためには、論理も証拠も必要ありません。
頭から信じたがっている人には、自信満々な素振りだけで充分なのです。

それならば特定失踪者家族と調査会の狭いサークルのなかで、
よろしくやっていればいい。
私達には関係のない話だ。
そう思われるとしたら、
それは拉致関係者の希望している通りの考え方をしていることになります。

考えても見て下さい。
拉致問題にさほど関心がない人でも、
拉致問題が十数人の認定拉致被害者の問題ではなく、
それを含めて数百人、どうやらいるらしい、
というイメージを持たれている方が大勢いるはずです。
政府の拉致関係の行事などもその前提で行われており、
安倍総理や菅官房長官もその前提で話をしています。

この数百人が特定失踪者な訳ですが、大勢いる一般の行方不明者の中から、
特定失踪者と呼ばれる人を最初に選別し、
今もしているのは一体誰でしょう?
政府ではありません。
警察でもありません。
それをしているのは、何の権限も持っていない民間団体である、
特定失踪者問題調査会とその会長荒木氏なのです。
だから特定失踪者家族は、恩義のある荒木氏に服従するのです。

拉致問題といってもたった十数人の話でしょう?何でそこまで大騒ぎするの?
という多くの人の疑問に対して、
いやいや、拉致は実は何百人もされているのだよ。
と答えるその根拠は、調査会とその会長荒木氏の判断にしかないのです。
これはとても重要なことです。

調査会という組織、荒木氏という人物が、
どこからみても非の打ち所のない組織・人物ならまだいいのですが、
その辺りはどうでしょうか?

11月12日に荒木氏と特定失踪者家族は
菅官房長官兼拉致問題担当大臣に面会し、
要請文書を手渡したそうです。
araki.way-nifty.com/araki/2018/11/12news285930119.html
この記事に全部で10項目の要請文書の内容が記されています。
この文書の内容が問題です。
いや、もう問題だらけと言いたいのですが、
とりあえず主だったものだけ指摘します。

7、国内での協力組織・個人への取締りについて
 北朝鮮の拉致は今後も行われる可能性があります。
日本国内の工作員・協力者は現在も行動しており、
韓国の親北勢力とも連携をして公然・非公然にその活動を活発化させています。
この際あらためて北朝鮮に協力的な組織及び個人に対して厳しい取締りを行い、
可能な限り摘発をしていただきたくお願い申し上げます。

・・・日本では北朝鮮に協力的というだけで、
違法行為を犯してもいないのに、その虞(おそれ)があるというだけで
取り締り・摘発をされなければならないのでしょうか?
とんでもないファシスト国家ですね!

9、他の北朝鮮の人権問題について
 韓国政府は政権交代以来北朝鮮人権問題について
一切言及しなくなりました。
日本人はおろか韓国人拉致被害者についても何もしておらず、
逆に北朝鮮を救おうとする動きを強めるばかりです。
生存している全ての拉致被害者を救出するためには
北朝鮮の人権状況が抜本的に改善されることが必要不可欠です。
総理はたびたび「拉致問題を解決しなければ北朝鮮は明るい未来を描けない」
と発言しておられますが、逆に、
一部拉致被害者の帰国が
他の人々の人権を踏みにじることになってはなりません。
 日本政府として北朝鮮人権問題について、
特に日本人妻や帰国者・戦後残留者及び強制収容所・公開処刑などの
問題についてより踏み込んだ取り組みをされるようお願いします。 

・・・支離滅裂で何を言っているのか分かりません。
なぜ「全ての拉致被害者を救出するためには北朝鮮の人権状況が
抜本的に改善されることが必要不可欠」なのでしょうか?
2002年の5名帰国時、北朝鮮の人権状況はどのようだったのでしょうか?
「人権状況の「抜本的改善」がなされないので救出は不可能である」との
言い訳を事前にしているかのようです。
後一点、もの凄い嫌韓ぶりですね。

あと、荒木氏のものごとの判断の基準を、かなり明確に示している記事があります。
araki.way-nifty.com/araki/2018/10/news2842301015-.html
「「日本政府は北朝鮮に対し、平壌に連絡事務所を設置したいとの
意向を伝えていた」と共同通信が昨日報道しました。
外務省は否定しているようですが、
まあそんな話しが進んでいても不思議ではありません。
この交渉が行われているとすれば、安倍総理が全く知らないところで
進んでいるとも思えません。
極めて敏感な問題であり、総理が知らなかったのなら
担当者の首が飛んでも不思議ではありませんが、
以心伝心程度も含めて、すくなくとも官邸と全く別のことを
やっているはずはありません。
私は総裁選で石破元幹事長が
「連絡事務所を設置して」と言ったのを批判しましたが、
これが事実ならどっちもどっちということで
批判して悪かったかな、とも思っています。」
石破氏が連絡事務所の設置を主張したら批判するが、
安倍総理が設置に動き始めたら、批判して悪かったかな、と言う。
ここは、「どっちもどっちで(石破議員を)批判して悪かったかな」
ではなく、きちんと安倍総理も批判しなければならないところです。
・・・ということは、荒木氏は、他の人がやったら批判することでも
安倍総理がやれば、今後批判しなくなる、
という信念(?)の持ち主の様です。

調査会や特定失踪者家族は言います。
「特定失踪者問題に関心を持って下さい」。
私はここで家族の皆さんに申し上げたいです。
「特定失踪者問題調査会に関心を持って、しっかり監視して下さい。
荒木和博氏の言動に関心を持って、しっかり監視して下さい。
そして評価すべきところがあれば評価し、
批判すべきところがあれば批判して下さい。
そうしなければならないほど、彼らは重要な存在なのですから。」

生きているのになぜ助けられない (続き)

特定失踪者
10 /22 2018
生きているのになぜ助けられない!(続き)


前回「生きているのになぜ助けられない!」の中で、
4.「全拉致被害者」のうち、死亡している人がいた場合どうするのか?
という問題提起をしました。

これについては「新しい視点」の中でも触れているのですが、
拉致問題関係者の中で
「死んだ人をどうするのか」という文章を書いている人がいます。
特定失踪者問題調査会会長、荒木和博氏です。

彼はfacebookで以下のように語っています。
https://www.facebook.com/kazuhiro.araki.9/posts/1903182156439701
前半部分は、「なんだ、よく分かっているじゃないか」という内容です。
問題は後半です。

「だから例え「全被害者即時帰国」が実現したとしても、
拉致問題は終わらないのです。
それを忘れて韓国の大統領のように
満面の笑みで金正恩と抱き合うようなことは絶対にしてはなりません。
これまで何十年もやってきたことの責任は
絶対に彼らに負わせなければなりません。」

荒木氏に対しては、このブログで何度も批判してきましたが、
これは批判するとかいう次元を超えています。
ドン引きです。

自分で前半部分で可能性がほとんどない、
と言っている「全被害者即時帰国」が実現した場合、
というありえない仮定をした上で、
それでも「拉致問題は終わらない」などといっているのです。

「これまで何十年もやってきたことの責任は
絶対に彼らに負わせなければなりません。」
身内を拉致されている訳でもない荒木氏が、
なぜここまで北朝鮮を憎まなければならないのでしょうか?
拉致被害者家族ですら、
このようなことを言っている人は一人もいないのに。
このブログでも触れていますが、
彼が会長をしている特定失踪者問題調査会の特定失踪者ですが、
拉致被害者そのものではなく、現時点では「疑い」があるにすぎません。
それでこの憎悪では、むしろ「ヘイト」に近いのではないでしょうか。
拉致問題で被害者が帰国できないことの責任は
北朝鮮だけにあるのではありません。
北朝鮮による拉致が明らかになった時に、
早急な対策をしなかった日本政府にも責任の一端が
しかも大きな責任があることは明らかです。

彼の文章から伝わってくること。
それは
「和解」ではなく「憎悪」を、
ということです。

拉致問題を「和解」を妨げ、「憎悪」を煽る道具としているのです。

「生きているのになぜ助けられない!」と言いながら、
わざわざ拉致問題が
一歩も進まないような目標を立てている、救う会会長。
「拉致問題は終わらない」と言い、
ひたすら「憎悪」を煽ろうとする特定失踪者問題調査会会長。

拉致被害者家族の皆さん。
特定失踪者家族の皆さん。
このような現実度外視の考え方をする人たちと
いつまで一緒にやっていくつもりなのですか。
もう「騙されていた」と言える段階は、遥かに過ぎ去っています。
しかし後戻りは不可能ではありません。
せめて「憎悪」は捨てようではありませんか。

拉致問題が「北朝鮮への憎悪増幅装置」であることを続ける限り、
私達はそれに対して異議申し立てをし、戦い続けます。

特定失踪者問題調査会という組織

特定失踪者
09 /30 2018
特定失踪者問題調査会という組織

再度、「国民大集会報告」で触れた事例を、改めて問題にします。
今回は特定失踪者問題についてです。

念のため説明すると、「特定失踪者」とは、
「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない失踪者」のことであり、
「特定失踪者問題調査会」とは、
「特定失踪者について調査し、救出を目指す民間団体」です。

*警察庁「拉致の可能性を排除できない行方不明者」883名となっています。
あくまで「可能性を排除できない」人々であって、
「拉致被害者」ではありません。
この中から、毎年数名の方が国内で発見されています。

まず該当部分を再録します。

大澤昭一氏(特定失踪者家族会代表 大澤孝司さん兄) 
救出にあたっては、家族会、特定失踪者一緒に、生存している日本人を、
すべての日本人を見捨てることなく、1人からでも、1人でも多く、
一刻も早く取り戻してください。私たち特定失踪者家族の願いです。
多くの日本人の帰国があれば、すべての日本人が喜んでくれます。

 (全員即時一括帰国とは対比される声です)

荒木和博氏(特定失踪者問題調査会代表) 
 安倍総理には批判的だが、協力を惜しむものではない。
自衛隊を使うことを考える。
 拉致問題に関心のない人を、是非とも1人は連れてきてほしい。
 (このような集会を普通の人が見聞きしたなら、
驚かれるのではないでしょうか?逆効果になりませんか?)
 又、荒木氏は、特定失踪者調査会、家族会の方針として、
「1人からでも救出を」との決定があるにも関わらず、
繰り返される「全員即時一括帰国」に対し、全く触れませんでした。)


特定失踪者調査会が「1人からでも救出を」という方針を発表したのは、
わずか3か月前の6月29日。内容は以下になります。
araki.way-nifty.com/araki/2018/06/news276730629-f.html
「北朝鮮に対して「即時全員一括帰国」を求めるのは当然であっても、
100%の実現は不可能である。
ともかく可能なところから取り返し、
最終的に全ての拉致被害者の救出を目指すのが
現実的かつ妥当な方向であると考える。」とはっきり書いてあります。

それどころか、
「以上のような活動を具体的に行うが、
最後の1人まで取り返すためには
北朝鮮の中に入り調査を行わなければならない。
そのための官民合同調査団の結成に向けて準備を進める。
また、調査会独自でも陸路及び海路から北朝鮮へのアプローチを目指す。
ともかく情報が必要であり、
また現在明らかにできる情報は可能な限り明らかにすべきである。
これまでたびたび、北朝鮮側から日本政府に
拉致被害者・特定失踪者の情報が提供されたと言われており、
米朝の交渉の中でも提示されたとの報道がある。
政府は拉致問題を進展させようとするなら、
今あるリストを公表するよう求める。」とまで言っています。

にも関わらず、国民大集会で全会一致で賛同された決議文にはこうあります。
「我々が要求しているのは連絡事務所の設置でも、報告書や偽の証拠でもない。
認定、未認定にかかわらず全拉致被害者が
笑顔で家族のもとに帰ってくることだ。
だからこそ、金正恩政権に
全拉致被害者の即時一括帰国を決断させるという一点に
全精力を注ぐことが求められている。」
全く正反対の内容です。
荒木氏や大澤代表以下特定失踪者家族は
なぜこのような決議文に賛同できるのでしょうか?

大澤代表の発言は、会場で繰り返される「全員即時一括帰国」という
空気の中で、勇気のある発言であったと思います。
それを無にしてはなりません。

ちなみに決議文が読み上げられた後、司会の櫻井よしこ氏が
「盛大な拍手でこの決議案に賛同してくださればと思います」と言っています。
そして動画を改めて見てみると、
荒木和博氏が拍手している姿が、はっきり映し出されています。

一体荒木和博氏とはどういう人物、
特定失踪者問題調査会とはどういう組織なのでしょうか?

最初の定義を見て頂ければお分かりのように、
特定失踪者はあくまでも、拉致の可能性を排除できない失踪者であり、
拉致被害者そのものではありません。
だから救出を目指す前に、特定失踪者について調査し、
「拉致の可能性が排除できない」状態から、
「拉致されたことが間違いない」状態に持っていく、
あるいは「拉致でなかったことを明らかにする」ことをしなければ、
調査会は存在理由がありません。

つまり調査会は、拉致被害者であることの動かぬ証拠を調査して探し出し、
日本政府にそれをつきつけ、拉致被害者の認定を求めることが、
やるべき仕事の大部分でなければならない組織なのです。

上の決議文に
「認定、未認定にかかわらず全拉致被害者が
笑顔で家族のもとに帰ってくることだ」とありますが、
未認定とは日本政府が拉致被害者と認めていないという意味であり、
この文章は全く人を馬鹿にした、言葉遊びです。

しかしこの「ドーナツの穴、絶賛販売中」のような言葉遊びを受け容れ、
認定を求めることをやめた人・団体があります。
それが荒木和博氏・特定失踪者問題調査会です。

2013年4月6日、調査会は以下の決定をしました。
「調査会の目標とするところは拉致認定ではなく拉致被害者救出である」

荒木氏は認定を求めない理由をこう語っています。
長くなりますが誤解の余地がないように、
「「拉致認定」は本当に必要なのでしょうか」という
荒木氏の文章全文を掲載します。

「こう書くと、多くのご家族は抵抗感を持たれるでしょう。
これまで全国の支援組織では特定失踪者の拉致認定について
努力を続けてこられました。
もちろんご家族にとって何の理由で失踪したのかも分からない状態は
非常に辛いもので、その結論を政府が出してくれれば
一つの安心につながることは間違いありません。
調査会としても古川了子さんを代表として
ご家族の協力のもと行った拉致認定のための行政訴訟など、
政府に対しても度重なる拉致認定の要請を行ってきました。
しかし実際には拉致認定は5人が帰国して
松木薫さん、石岡亨さん、曽我ミヨシさんが追加された後
10年間に2人(田中実さん、松本京子さん)だけであり、
日本国籍がないために警察断定に留まっている
高敬美・剛姉弟を入れても4人にしかなりません。
そして、認定されてもそれが救出につながっていないのはお分かりの通りです。
また、認定されていても未認定でも、家族への対応に大きな違いはありません。
ときどき誤解される方がおられますが、
政府認定拉致被害者のご家族に国から生活費などの援助があるわけではなく、
政府による説明など(例えば日朝交渉の終わった後に報告する場合)で
東京から出てくるときの旅費が出るだけです。
しかも、政府が核心的な情報は伝えられません(原文ママ)。
まさかと思われるかも知れませんが、家族会の方々、
例えば横田めぐみさんのご両親に対してすら政府は
「めぐみさんはいつどこでどうやって拉致されてどこから連れ去られた」
といった情報を一切伝えていないのです。
もちろん他の家族会の方々も同様です。
今後拉致認定が行われてもおそらく事態は変わりません。
ご家族にとって、そして支援者にとって
「国が認めた」ということに大きな意味があるのは理解できますが、
帰ってこない、情報すら出てこないという意味では何の変化もないのです。」
 (『ひびき』(「調査会ニュース」改題) Vol.120  2013/4/1発行)

これを読んで、どう思われますか?
私には、「日本政府の拉致問題への取り組みがいい加減だから、
それに合わせて私達もいい加減にやろうではありませんか」
と言っているようにしか読み取れません。

付け加えると、第二次安倍内閣の成立は2012年12月末。
この発表のわずか3か月前です。
このことを表現する、とても便利な言葉があります。
「忖度」

安倍総理はよく「認定、非認定にかかわらず救出」と、
ことあるごとに言っていますが、
これは17個のドーナツと、約900個のドーナツの穴を、
抱き合わせで販売する、と言っているようなもので、
拉致被害者と特定失踪者をごちゃまぜにして
拉致被害者の人数を水増しして見せる、
はっきり言ってごまかし・欺き行為です。
荒木和博氏と調査会は、本来の役目を全て放り出して、
このごまかし・欺き行為に積極的に加担していると言ってよいかと思います。

ごまかし・欺き行為の共犯者と言われたくなければ、
拉致問題にいい加減に取り組んでいる日本政府をまず批判することです。
日本政府から拉致被害者として認められてもいないのに、
北朝鮮を批判し、救出を求めるのは、全くのお門違いです。

私達は日本政府が、そしてあなた方がいい加減だから、
それに合わせていい加減にする気は全くありません。
人権問題・命の問題である拉致問題には真剣に取り組みます。
異論があれば行動で示して下さい。

特定失踪者は、特定失踪者。
認定された拉致被害者は、拉致被害者。
日本政府が認定しない限り、拉致被害者は883人+αではなく17人なのです。

それが認められないなら、
日本政府・安倍総理に認定を求める努力をして下さい。
たくさん署名を集めることは、努力の名に値しません。
自己満足、運動が目的化していると言われても仕方が無いでしょう。

Serenity Prayer

某県「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出する〇〇の会)元幹事。
脱退後に意見の対立から除名されたらしい。(正式な通告はなかった)
ウヨク的思考を経て中立に物事を見て、判断し、発言する方向へ変わる。
中立の立場から今の拉致問題のあり方に疑問を持つ。
拉致問題に限らず、考え方はヒューマニズムに立つ。