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本文 ダイジェスト

新しい視点
06 /16 2018
本文 ダイジェスト

私達は拉致問題における安倍総理の行動を「詐欺」と見なします。
そしてその「詐欺」の内容は、
・北朝鮮を一方的に嘘つき呼ばわりし、絶対解決できない要求をつきつけることで、拉致問題の進展をストップさせておきながら、その責任を全て北朝鮮に転嫁させた。
・そして北朝鮮の脅威を言い立て、社会全体の右傾化、アメリカ追従・憲法改正のための世論づくりのために最大限に利用した。
ことにあると考えます。
今トランプ大統領による(その意図がどうであれ)アメリカの路線変更により、その詐欺行為は挫折し、東アジアにおける和解への道が引かれようとしています。
この現状に「詐欺」を本質とする安倍政権がたとえしぶしぶとであれ、対応できるとは考えられません。
現在森友・加計問題で行っているような、自分一人の権力の維持のために、表面的なごまかし・見え透いたうそなどを乱発し、和解への道をめちゃめちゃにすることが予想されます。
そのような恐ろしい未来はなんとしても避けなければなりません。
そのため、
拉致被害者がかわいそうだ⇒全ての元凶は北朝鮮だ。制裁を加えよ。
という今までさんざん広められてきた、分かりやすいヘイト感情に対して、
拉致被害者がかわいそうだ⇒二度と悲劇が繰り返されないように、真実を明らかにして、和解の道を開こう。
という現在の右傾化が進んだ日本では「偽善的」と言われかねない方針を、
説得力のあるかたちで示そうと考えました。
それが以下の文章になります。
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目次

新しい視点
06 /16 2018
目次
序文
Ⅰ なぜ「拉致被害者の全員一括帰国」という目標はフェイクなのか?
(南北会談後は「即時全員一括帰国」と言い出している)
Ⅱ 日本政府はどちらの方向をむいているのか?
Ⅲ なぜ北朝鮮への憎しみを増幅させるのか?
Ⅳ なぜ安倍政権は拉致問題を政治利用できるのか?
Ⅴ 全ては戦争できる国になるために!
Ⅵ 拉致問題の広報活動を担った人・団体は?
Ⅶ ほぼ永遠に「生き続ける」ことになっている拉致被害者
Ⅷ 拉致被害者家族はマインド・コントロールにかかっているのか?
Ⅸ なぜ、家族をマインド・コントロールにかける必要があるのか―拉致問題の産業化
Ⅹ 産業化されて、どうなったのか?
Ⅺ 拉致問題の解決はどのようなかたちでありうるのか?
終わりに

序文

新しい視点
06 /16 2018
序文

かつて、第二次安倍政権成立から二日後の2012年12月28日、安倍総理は救う会(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国評議会)・家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)のメンバーと面会し、以下のように言っています。
「5年前に突然辞したとき、被害者家族の皆さんに大変残念な思いをさせた。私にとってもつらいことだった。私がもう一度総理になれたのは、なんとか拉致問題を解決したいという使命感によるものだ。
5人帰還の時、帰ってこられなかった被害者の家族の皆さんは涙を流していた。それを見て全員取り戻すことが私の使命と決意した。
しかし、10年経ってもそれは達成されておらず申し訳ない。
再び総理を拝命し、必ず安倍内閣で完全解決の決意で進んでいきたい。」

 当時私たちはある県の救う会に所属して、拉致被害者救出1000万署名運動に全力投球しており(2013年4月25日達成)、拉致問題に理解があるとされている安倍総理の再登板に、大いに意気があがる思いでした。
 1000万の署名は達成日の二日後の拉致被害者救出国民大集会で、当時まだお元気だった横田滋さんから安倍総理に手渡されました。
その光景を会場で目の当たりにし、私たちはこれから拉致問題が前進することに、大きな希望を感じていました。

それから5年後の2018年4月22日、拉致被害者救出国民大集会で安倍総理は以下のように言っています。
「今後一層、日米で緊密に連携しながらすべての拉致被害者の即時帰国に向け、北朝鮮への働きかけを一層強化していく考えです。
  (略)
拉致問題は安倍内閣の最重要、最優先の課題です。拉致問題は安倍内閣において解決をする。拉致被害者の方々が、ご家族の方々と抱き合う日がやってくるまで、私たちの使命は終わらないとの決意で、今後ともこの問題に取り組んでいきます。」

この5年の間に、願いが激しく裏切られた私たちは、安倍総理を盲信する救う会に幻滅して脱退し、独自の運動をしていました。安倍総理を応援する運動ではなく、あくまでも具体的な拉致被害者救出につながる運動を目指し、行動してきました。

その過程で私たちの安倍総理への見方はどんどん変わっていきました。
2015年9月以降、国会前の反安倍デモの間で拉致問題に関するチラシを何万枚も配りましたが、その見出しは
「STOP!ヤルヤル詐欺 気を付けてください!北朝鮮による拉致被害者を見殺しにするその手口」というものでした。

私達の現在の安倍総理に向ける視点はこうです。
「詐欺師」
・・・ヤルヤル詐欺などなまやさしいものではありません。
その違いは
「ヤルヤル詐欺」で騙されているのは拉致被害者家族や支援者です。
一方、無印の「詐欺」で騙されているのは日本国民全員です。
日本国民全員が、この「詐欺」で大変なデメリットを負わされているよう、私たちには思われます。

その「詐欺」の内容を私たちは、以下のように考えています。

「拉致問題における
“拉致被害者の全員(全被害者)一括帰国”という公式の目標はフェイクであり、
拉致問題を一切進展させず、未解決のままにするための、「誤った前提」である。
(ここまでが拉致被害者家族・支援者への「ヤルヤル詐欺」)

日本政府をはじめとする拉致関係者の真の目標は、
仮想敵国である北朝鮮への憎悪・恐怖をあおり、
その脅威に対抗するため、軍事大国アメリカとの絆を強固にする必要があることを主張し、日米の軍事的な共同歩調を正当化する。
つまり日本がアメリカ主導の軍事作戦に参加できること、戦争できる日本にすることを目指すことであり、
その目標達成のために拉致問題と拉致被害者とその家族を、徹底的に利用し尽くすこと。(これが日本国民全員への「詐欺」)」

もちろん「詐欺をしました」という明確な証拠はありませんし、「騙された!」と被害者が申し立てを行わなければ詐欺罪は成立しません。

そしてどこまでも安倍総理についていく方々は、こう言うかもしれません。
「安倍総理は一生懸命頑張っている。お前たちのようなものが総理の足を引っ張るから問題は解決しないのだ」
「そのように文句を言うのなら、代案を出してみろ。北朝鮮に行ってお前が拉致被害者を救出してみろ」

それに対して、私たちは以下のように言いたい。
「拉致問題を実際に解決するためには「常識的な前提」に基づいた目標が必要です。
それは「誤った前提」では、拉致被害者は全員生存していて、全員帰国を切望していることを疑問の余地のない真実としていますが、それは何の根拠もなく、拉致被害者を「全員」という顔のない集合として扱っているに過ぎません。

「常識的な前提」では、以下のことを認めるべきです。
拉致被害者の中には現在生きている人、残念ながらお亡くなりになった人がいる「可能性があります」。
そして現在生きている人でも、帰国を望む人と望まない人がそれぞれいる「可能性があります」。
「全員一括」ではなく、拉致被害者一人一人の実状に即した解決が必要です。
それは「拉致被害者の全員一括帰国」ではなく
・現在生きていて、帰国を望んでいる人 →帰国
・現在生きていて、帰国を望まない人 →こちらから訪問する
・残念ながらお亡くなりになった人 →その死を悼み、北朝鮮側に何らかの形で償ってもらう
といったケースバイケースの解決の積み重ねこそが、実現可能な拉致問題の解決と思われます。」

上の記述は、拉致問題に関する公式な見方とは根本的に異なっています。
これからそう思うに至った根拠を説明し、皆さんに「今まで私たちは騙されていたのか!」と感じて頂きたいと思います。
そして現在日本国民の代表である安倍総理を、少なくても拉致問題についてだけでも、今後二度と騙されないように監視し、これからも「詐欺」行為を続けるようなら、厳しく批判し、これからも私たちの代表である資格があるのかどうかを問うて頂きたいと思います。

安倍総理が今、政権を懸けて国民を騙し通そうとしている森友学園・加計学園の問題同様、拉致問題についても国民を騙し通そうとしていることを知っていただき、
「嘘つきに国を任せることはできない!」と声を挙げていただければと思います。
「そのうち、国民は飽きて、忘れる。」と嘯く人を国のトップに置き続けることを
許してはなりません。

さて、これから行われる説明は今までの拉致問題に関する公式な見方に対して、厳しく批判的なものになります。

その際、拉致被害者家族に対しても批判的な内容になることもあります。
そういう場合、「家族の前でその言葉を言ってみろ」という言い方をする方がいるかも知れません。

そういう人にはこう言いたい。
できれば私たちは自分達の意見を、拉致被害者家族にこそ訴えたいのです。
特に、拉致問題の象徴のような存在である横田早紀江さんには、まず、この文章を書く際の、心の支えとなった言葉をお伝えしたいと思います。
クリスチャンである早紀江さんにはよく理解して頂けるものと確信致します。

「神よ、変えられないことを受け容れる心の平静さ、
変えられることを変える勇気、
変えられないものと変えられるものを
見分ける知恵を授けてください」

  神学者ラインホルド・ニーバーの「平静の祈り」

読み終えた後、改めてこの言葉を振り返って頂ければ幸いです。

Ⅰ なぜ「拉致被害者の全員一括帰国」という目標はフェイクなのか?

新しい視点
06 /16 2018
Ⅰ なぜ「拉致被害者の全員一括帰国」という目標はフェイクなのか?
 (南北会談後は「即時全員一括帰国」と言い出している)

拉致問題において、日本政府に対して最も厳しい観方をする人でも、その非難の内容は「やる気がない」「解決する気がない」であり、あくまでも日本政府は「拉致被害者救出を目指す」という方向を向いていることになっています。
例えば、『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(蓮池透)という極め付けに厳しいタイトルの本でも、「本当に安倍晋三首相に拉致問題を進展させる気概があるのか、はなはだ疑問である」(p2)と書かれています。

しかし私たちの現在における、日本政府への評価は、それより遥かに厳しいものです。
それは
「そもそも日本政府は、拉致被害者救出を目指してなどいない」
ということです。
言葉を代えて言えば、一般の拉致被害者に同情的な国民と、日本政府は、向いているベクトルが違うのです。

これは私たちが勝手に思っている訳ではなく、きちんとした根拠があります。
それが
「「拉致被害者の即時全員一括帰国」という目標がフェイクである」
ということであり、さらに言えば、
この目標は前提自体が、誰が見ても間違っていて、その強引な間違い方は、単なるミステイクであるとは、とても考えられないということです。

それでは前提の間違いについて、具体的に見てみましょう。
そのために目標の前提を
①「拉致被害者全員の内訳を日本政府は把握している」
②「拉致被害者は全員生きている」
③「拉致被害者は全員日本に帰国したがっている」
の3つに分け、それぞれの内容を分析してみることにします。

①拉致被害者全員の内訳を日本政府は把握しているのか?
いわゆる認定拉致被害者については把握していると言えます。政府の拉致問題対策本部のHPでも17人の名前が明記されています。(内5人は帰国しているので実質12人) しかしさらに見るとこうあります。
「政府は、北朝鮮に対して、これまで認定している拉致被害者に限らず、すべての拉致被害者の安全確保と即時帰国を繰り返し要求しています。」
「すべての拉致被害者」とは、これまで認定している拉致被害者に限らない、と言っています。
HPをさらに見れば分かるように認定拉致被害者だけでなく、
「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人」がいることになっています。
そして「政府は、北朝鮮に対し、北朝鮮によって拉致された可能性を排除できない人に係る関連情報の提供を繰り返し要求しており」とあります。

つまり、「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人」の中の実際の拉致被害者の内訳は日本政府も自ら知らないことを認めています。
それは北朝鮮にしか分からないのです。
「可能性を排除できない」というのは消去法による一方的な断定に過ぎず、毎年日本国内で生存・所在が判明する人が出ることからも判ります。

拉致被害者全員を、認定拉致被害者に限っていない以上、その内訳を日本政府は把握している、とは到底言う事はできないのです。
*警察庁のHPには「883人」の方が「北朝鮮による拉致の可能性を排除できない行方不明者」として記載されています。(2018.5.4現在)勿論、確たる拉致の「証拠」が有る為記載しているわけではありません。前述したように、状況証拠・消去法により「北朝鮮による拉致以外考えられない」という理由によります。

②拉致被害者は全員生きているのか?
ここで私たちは「拉致被害者は全員死んでいる」と言いたい訳ではありません。そもそも拉致被害者全員の内訳を知らない以上、そのような言葉は無意味です。
①で述べたように「全員」の内訳が明確でない上に、北朝鮮にいる拉致被害者の生死は北朝鮮にしか分からない以上、
「何人いるのか分からない拉致被害者が全員生きていることを日本政府が確信している」というのは、論外という他ありません。

③拉致被害者は全員日本に帰国したがっているのか?
ここで私たちは「拉致被害者は全員日本に帰国したがっていない」と言いたい訳ではありません。
日本に帰国したがっているのかどうかは、拉致被害者本人にしか分からない、と言いたいのです。
そう言うと、「北朝鮮で自由にモノが言える訳ではないから、言わされている可能性がある。本心は帰りたいに決まっている」と言う人がいますし、もちろんそういう場合もあるでしょう。
一方で、
・北での家族を残して帰国できない
・日本には身よりがいない
・生活基盤が北朝鮮でとりあえず安定している
 以上の理由から帰国を望まない場合もあります。
頭ごなしに勝手に決めつける権利は誰にもありません。
※②③についてはより詳しく後述します。

以上これほど曖昧な前提に「一括」までついてしまったら、もうどうすることもできません。
それに「即時」までつくことになりました。「即時」とは具体的にいつのことをさしているのか、言い出した人がはっきりさせなければ、誰にも分かりません。
しかも「全員一括帰国」を達成しよう、というのは単なる努力目標ではなく、
「全員一括帰国」しか認めない、という自らを縛る救出の「原則」としてしまいました。
そうすると「段階的に」全員を把握する、「段階的に」生死を把握する、「段階的に」帰国の意思を確認する、という当たり前の過程が全てシャットアウトされてしまいます。

「拉致被害者の即時全員一括帰国」が目標である限り、拉致被害者救出活動は一歩も進むことはできません。
そしてこの目標は誰かから押し付けられたものではないのです。
日本政府・救う会・家族会が自分達で決めたものです。異論を許そうともしません。

だから上の根拠に基づいて改めて断言します。
「「拉致被害者の即時全員一括帰国」という目標はフェイクである」

今まで読んできた方にはお分かりでしょうが、被害者の救出を実現させるためには「北朝鮮に確認して、とりあえずそれを信じる・北朝鮮から出された情報をひとまず受け取る」ことが必要になります。
そうすれば、先の①②③は全てクリアできます。
問題は全て0人になってしまう可能性が極めて高いことです。
ですから当然のことですが、情報を受け取るだけではなく、情報の内容精査が必要になります。
この精査こそが、支援者や家族にはできないことで、プロフェッショナルの政府関係者しかできないことになりますが、現状はどうなのでしょう。
この件は大変大事なことなので、後に改めて論じます。

Ⅱ 日本政府はどちらの方向をむいているのか?

新しい視点
06 /16 2018
Ⅱ 日本政府はどちらの方向をむいているのか?

「目標」がフェイクであるとして、「向いているベクトルが違う」という結論の根拠は何でしょうか?
 皆さんご存知の安倍政権特有の言い回し
「対話のための対話はしない」という言葉を考えてみましょう。
「対話のための対話」・・・どういう意味でしょうか?
随分難解な行為のようですが、これは「対話をしない」ということをぼかして言っているだけです。
安倍政権は「北朝鮮とは対話・交渉をしない」と明言してきた訳です。
戦前の「蒋介石を相手にせず」そっくりそのままですね。

上で述べたように、日本政府の目標は、北朝鮮の協力がなければ、達成不可能なものです。
それなのに「北朝鮮とは対話・交渉しない」と言って、実際交渉してきませんでした。

救う会会長の西岡力氏は事あるごとに
「水面下で胃の痛くなるような交渉が繰り広げられている。詳細については機密なので言えない」
と言い続けてきましたが、そのような交渉は行われていなかったことは、現在の北朝鮮との外交チャンネルがなく慌てふためいている日本政府の醜態をみれば、おのずと明らかです。

交渉しないで何をしていたのか?
日本国民・海外向けの広報活動をしていました。
この広報活動が問題です。
日本政府の拉致に関する政策に厳しい観方をする人は、広報活動に狂奔する政府に対して「もっとするべきことがあるだろう」と批判しています。
目の前の難題からの逃避だと見なしているのです。

しかし私たちは逃避だと思いません。
これこそが日本政府の真の目的だと考えているのです。

それは「北朝鮮のイメージの実像以上の悪魔化」です。

Ⅲ なぜ北朝鮮への憎しみを増幅させるのか?

新しい視点
06 /16 2018
Ⅲ なぜ北朝鮮への憎しみを増幅させるのか?

とはいえ私たちも北朝鮮の実像を知ってはいません。
今のところ知っている人などいないでしょう。
ですからここでは「北朝鮮の実像を知らないのに、北朝鮮の脅威・北朝鮮への憎しみを過剰に煽る行為」を問題にします。

数カ月前のトランプ訪日前後の頃を思い出して下さい。
核と拉致のために戦争はもはや規定路線という風潮だったはずである。
Jアラートの訓練を思い出して下さい。
日本に北朝鮮のミサイルが飛んでくる前提で、物事を進めていたはずです。
そもそも日本と北朝鮮の間には戦争目的自体がなかったのに。
では戦争目的がないのになぜ脅威なのか。
そのすべての根拠は拉致にあります。
いや根拠というよりイメージ。13歳の少女を拉致する恐ろしい国というイメージをひたすら増幅させているのです。
何のために?

自民党(安倍)政権のためにです。

Ⅳ なぜ安倍政権は拉致問題を政治利用できるのか?

新しい視点
06 /16 2018
Ⅳ なぜ安倍政権は拉致問題を政治利用できるのか?

 ここで拉致問題の政治利用について考えてみます。
先の蓮池透氏の本でもこう書かれています。
「拉致問題を最も巧みに利用した国会議員は、やはり安倍晋三氏だと思っている。拉致問題を梃にして総理大臣にまで上り詰めたのだ。」(p85)
それにしてもおかしな話です。安倍総理の拉致問題における実績はゼロなのですから。

よく政治利用でもいいから実績をあげて、という人がいますが、実績など一切上っていないのに、なぜ政治利用できているのか?

それが拉致問題における広報活動の成果です。
広報活動の成果に以下のものがあります。

①最大の人権問題(?)である拉致問題に熱心な与党、不熱心な野党というイメージを作ることで、まるで与党が人道的で、野党が非人道的であるかのように装える。
②5人帰国は与党の実績、死亡とされている7人は生きている、というイメージを作った上で、ただ「取り返す」と連呼することで、拉致問題では誰も死んでいないことにして、拉致被害を防げなかった与党の責任を棚上げすることができる。
③危険な国家北朝鮮の危機を煽ることで、世論を右傾化させ、タカ派的な発言・行動をする与党の支持率上昇・憲法改正に利用することができる。
④北朝鮮の危機を煽り、「交渉は無意味」「大事なのは圧力のみ」と言い続けることで、武力こそが全てという言論空間を作り上げ、「アメリカ追従容認」「9条改正は正義」という与党に都合がいいだけのスローガンを浸透させることができる。
⑤北朝鮮の危機を煽り、政権のスキャンダルを追及する野党に対して、「総理は北朝鮮対策をしなければならないのに、些末なことで責任を追及する野党は非国民」と開き直ることができる。

これは大変な成果です。
日本政府の拉致問題への取り組みが不熱心であるとは到底いえません。大変熱心です。
ただ、取り組みの方向性が、政治利用の方しか向いていないということが大問題なのです。
しかしこれは、見てお分かりのように、私達大多数の国民の利益と、真っ向から対立しています。
それでは安倍政権にとっての利益とは何なのか?

Ⅴ 全ては戦争できる国になるために!

新しい視点
06 /16 2018
Ⅴ 全ては戦争できる国になるために!

 ここで見て頂きたい新聞記事があります。
 毎日新聞2017年12月22日のクローズアップ2017
「長距離巡航ミサイル導入へ 敵基地攻撃も可能 揺らぐ専守防衛」という記事です。
 ここで注目して頂きたいのは以下の部分です。

「公明党幹部は12月初旬、ミサイル導入への理解を求める防衛庁幹部に、「うちは『島しょ防衛のため』という説明ではもたない」と消極姿勢を示した。
 防衛庁は導入の根拠を練り直し、「北朝鮮の脅威からイージス艦を守るため」との「目的」を追加した。核・ミサイル開発を加速化する北朝鮮と関連づければ「世論の理解を得やすい」(防衛庁幹部)との狙いだった。この説明で公明党も容認に転じた。」

北朝鮮の脅威とはなんと便利なものなのでしょうか!

 また、見て頂きたい雑誌の記事があります。
 女性自身2017年11月14日号の
「横田早紀江さん 制止された「戦争やめて」大統領への直訴」という記事です。
 ここで注目して頂きたいのは以下の部分です。

「「会の終わり際に、早紀江さんがこう話したんです。『トランプさんに会ったら、戦争はしないでくださいと言おうかな、それとも政治的発言は控えたほうがいいのかな』と・・・
だがその瞬間、出席していた「救う会」関係者が、早紀江さんの言葉をさえぎるようにこう話したという。
「政治的発言はしないほうがいい。大統領に会えるのも安倍さんのおかげなんですから」」

補足説明すると「救う会」関係者とは前述の西岡力救う会会長。
横田早紀江さんはトランプ大統領との面談の際、「戦争しないでください」とは言いませんでした。

 さらに、2015年7月30日の参議院における、安保法制に関わる、中山恭子議員の質問への、安倍総理の答えを見て下さい。
安保法制の内容は、拉致被害者救出ができるようになっていない、という質問への答え。

「拉致被害者の方々の安全確保は極めて重要であり、その際、同盟国である米国との協力は極めて重要であると考えております。~これまで米国に対して拉致被害者に関する情報を提供してきておりますし、拉致被害者の安全が脅かされるような事態に至った場合に、拉致被害者の安全確保のための協力を米国政府に対し依頼をしているところでございます。」

安倍政権が「戦争のできる国」を目指して行ったこと、言ったこと、アメリカ追従の振る舞いの数々は、何もここで列挙するまでもなく、皆さんも既に見て来たはずです。

駆け足ですが最初に提示した結論に行きついたようです。

Ⅵ 拉致問題の広報活動を担った人・団体は?

新しい視点
06 /16 2018
Ⅵ 拉致問題の広報活動を担った人・団体は?

ここで結びにいってもいいのですが、これだけだと、やや事実による裏打ちが足りないように感じられます。
特に拉致問題を大きくねじ曲げた広報活動について、成果は列挙しましたが、なぜこんなに成果が上がったのか、誰がこの活動を担ったのかについては一旦飛ばしました。

とても大事な事なので、そして実は広報活動などという生易しいものではなく、はっきり言って「詐欺」、具体的に言うと「マインド・コントロール」という側面があることについて、改めてここで説明したいと思います。
・拉致問題対策本部
・救う会(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)
・家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)
主だったのは以上3団体です。
それぞれについて説明したいと思います。

①拉致問題対策本部
拉致問題対策本部と拉致担当大臣については、非常に小さなことですが、その本質を鋭くついた出来事に、運よく立ち会ったことがあります。
まずその話をいたします。

2014年の4月29日に、劇団夜想会による拉致問題啓発演劇「めぐみへの誓い―奪還―」の公演が、横浜市の神奈川県立青少年センターホールで行われました。
その時私は、その会場のロビーで署名活動を行っていました。

公演が始まって、署名の波が収まり、少し休憩していると、ロビーの会場側の方で、当時の拉致担当大臣古屋圭司氏が、数人の記者にインタビューを受けているのが目に入りました。
拉致担当大臣としての自分の功績として、津川雅彦氏を起用したポスターを作ったこと、このような劇の各地での講演を後押しすることで、拉致問題の啓発に努めたこと、などを語っていました。

するとある記者が、
「それでは、拉致被害者救出のために、具体的にどのような活動をされているのですか?」という質問をしました。すると古屋氏は色をなして、「今言ったじゃないですか!」と声を荒げたのでした。
何だか笑い話のようですし、確かに滑稽なのですが、これは笑ってはいられない問題です。
これはHPを数分見れば一目瞭然のことなのですが、拉致問題対策本部は拉致被害者の救出に取り組む機関などでは、ありません。
本部長が、内閣総理大臣。副本部長が、拉致問題担当大臣・内閣官房長官・外務大臣。
というような何でもできそうな布陣ですが、やっていることは、拉致問題に関する広報活動・啓発活動のみです。北朝鮮向けラジオ放送というものもありますが、それが拉致被害者救出作戦だ、と胸を張って言うことは、さすがにできないでしょう。

横田滋・横田早紀江(聞き手石高健次)『めぐみへの遺言』に以下のような記述があります。
早紀江「それ(拉致対策本部の成立)以前は、拉致のことは外務省がいろいろやっていて、日朝協議があればその度に内容を教えてもらったり、突然情報が入ったら家族会が呼ばれて話を聴いたりしていました。けれど拉致対策本部ができてからは外務省の方と直接話をすることがなくなっています。拉致対策本部の会合に呼ばれた時には外務省の方もその場に来られたりしていたから、ちゃんと一緒になって機能していると思っていました。
ところが、ある時、外務省の方から、「僕たちには何も情報がこないんです」「今、拉致のことで日朝がどうなっているのか分からないです」と言われてびっくりしました。その人は、「何か一つの情報でも言ってくれればそれをきっかけにして外交手法で道が開ける場合もあるのに、それができない」と。」
「拉致問題対策本部事務局の実務責任者の三谷さんは、以前「いつでも電話下さいね」と言われていたから、電話をすると「いや~、何もありません」と言われるだけ。何度かけても同じ返事です。」(p202-203)
対外交渉のエキスパート外務省から仕事を奪い取って、どんな成果をあげたのでしょうか?

ちなみに、つい先日の2018年4月22日(27日の南北会談の5日前!)の拉致被害者救出国民大集会で、現拉致問題担当大臣の加藤勝信氏は、政府の取り組みとして「アニメめぐみ」の教育現場での積極的活用や作文コンクールへの参加・演劇「めぐみへの誓い―奪還―」の公演について語り、さらに「最近ロンドンでは、日本人拉致問題をモデルにした舞台劇「ザ・グレイト ウェーブ」が、ロンドンの「ナショナル・シアター」で約1か月に渡り上演され、そして拉致問題を知らなかった英国の観客にも衝撃と感動を与え、大変好評を博したとうかがっています。」などと語ったのでした。
拉致被害者救出とは縁もゆかりもない話です。

さらに言うと救う会会長西岡力氏の著書『横田めぐみさんたちを取り戻すのは今しかない』で以下の記述があります。
「2006年9月、安倍晋三政権が成立し、・・・総理を本部長とする拉致問題対策本部と拉致担当大臣が新設され、予算を持つ事務局もできて、やっと政府レベルで死亡謀略と戦う体制ができた。」(p234)
・・・・救う会会長ですら、拉致問題対策本部を死亡謀略とやらと戦う組織だと見なしているようです。死亡謀略と戦ったら拉致被害者が帰ってくるのでしょうか?

上に「「アニメめぐみ」の教育現場での積極的活用や作文コンクールへの参加」とありますが、「拉致被害者救出につながる行動をとらず」「(コンクールというかたちで)ある方向へ若年層を思想誘導しようとしている」ようにも見えるもので、拉致問題対策本部の本質がここに如実に表れています。
この文章のような作文を子供たちが書いたら、賞を与えるのでしょうか?

とはいえ「アニメめぐみ」の内容は決して悪いものではなく、押し付けさえしなければ、私達も積極的に多くの人々に見てもらいたいものだと思います。
「めぐみへの誓い」はやや想像の部分が多く、北朝鮮批判が過剰なようにも感じられますが、ヘイトを煽るというほどの内容ではありません。
やはり政府の機関である以上、ある程度の制約があるように感じられます。

より多くの問題は民間の団体にあります。

②救う会
救う会会長の西岡力氏の名前は今までも頻繁にでてきました。
この項では最初に救う会副会長の島田洋一氏を取り上げます。
(可能でしたら島田洋一氏のツイッター、ブログをざっと見て下さい)

ツイッター、ブログを見られない環境の方のために、特別印象深い箇所を抜き出してみます。

・かつての日本なら、とうの昔に軍事力で北の独裁体制を潰し、拉致被害者のみならず住民全体を解放していただろう。軍=悪という迷妄にはまった国の悲劇。
(2018年1月3日ツイッター)
・日本人拉致問題も取り上げるから支援して欲しいなどと韓国は言ってくるだろう。南北野合しての対北圧力緩和工作に一切乗せられてはならない。(2018年2月10日ツイッター)
・この期に及んでまだモリカケ問題で時間を空費させようとするならば、この国の野党の存在は犯罪的だ。(2018年3月22日ツイッター)
・シンガポール開催なら金正恩の乗る飛行機が「謎の墜落」で一件落着というシナリオも現実味を帯びてくる。(2018年5月10日ツイッター)
・安倍首相の存在は間違いなく大きい。「三重の布陣」の後の「二重」の強さについては知らないが。今安倍退陣などとんでもない。(2018年6月8日ツイッター)

なかなか強烈な内容です。
このような人物が副会長を長年務めている団体が不偏不党であるとは、誰にも言うことはできません。

そして会長の西岡氏です。
かつての民主党政権時の選挙前にはこのようなことを書いています。
「野田首相が、そうではなく、拉致という国家の主権と国民の人権に直接かかわる問題を、自らの支持率向上の手段にするという、禁じ手を使おうとしているのであれば、もってのほかである。今後の交渉は、衆院選挙後に誕生する政権に任せて、選挙前の再協議や水面下での譲歩をすべきでない。
 主権にかかわる問題を選挙に利用しようとするのは売国にも似た行為であると釘を刺しておく。」
(2012年11月27日 産経新聞正論欄「拉致を「人気取り」に利用するな」より)

そして直近の自民党政権時の選挙前にはこんなことを書いています。
「今、戦後日本は北朝鮮問題で未曽有の危機を前にしていると断言できる。その意味で安倍晋三首相が今回の総選挙で「国難突破」と訴えていることは理解できる。いや、もっと強く危機を訴えるべきなのにそれが足りないという印象だ。」
(2017年10月20日 産経新聞正論欄「未曽有の北朝鮮危機を直視せよ」より)

救う会は全面的に自民党寄りといえるでしょう。

また先の西岡氏の本には以下のような記述もあります。
「集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈を行った安倍総理が、まず、オバマ大統領と北朝鮮崩壊時の日米韓の協力と被害者救出について戦略的レベルで真摯な議論をしてほしい。」
島田氏よりやや上品な言い回しですが、大変な「戦争屋」というべきで、横田早紀江さんの平和を願う発言を阻止したことも、この人であれば当然と言えましょう。

しかし救う会にはこの二人以外にも多くの人がいるのではないか?
確かにいることはいます。しかし独自な見解をもつことは許されていません。
それが証拠に、少しでも救う会の公式見解から外れたものは容赦なく排除しています。
2015年10月21日に救う会全国協議会は構成団体の「救う会徳島」「救う会神奈川」の両代表を除名しています。

その理由は「拉致被害者のみを優先せず、特定失踪者、日本人妻、残留日本人、敗戦時の混乱期に北朝鮮地域で死亡した人の遺骨探しについても公平に扱うべき」と救う会の運動方針と異なる内容の主張を行ったというもの。
・・・これが除名させられるほどの内容でしょうか?
人権問題に格差をつける人たちの方が遥かに問題なように思えます。

先に書きましたが、与党の専売特許である「最大の人権問題」拉致問題は、その他の人権問題と並べることすら許されないのです。唯一無二の悲劇でなければならないということです。

先に西岡氏が著書で、拉致問題対策本部は死亡謀略と戦う機関だと書いている箇所を引用しました。
その言い方を借りれば、救う会は生存謀略を行う機関であると言えます。

ここでは証拠として私が実際体験したことを書きます。
2017年11月21日開催の救う会・家族会主催の東京連続集会「トランプ大統領面会報告と緊迫する北朝鮮情勢」に参加した時のことです。
最後の質問の時間に、以下の質問をしました。
質問「西岡会長の書かれた配布資料にこう書かれています。
「米韓軍に救出を依頼するにしても、自衛隊を送るにしても、まず、被害者がどこに何人いるのかについての正確な情報が必要だ。安倍政権はすでに一定の情報を確保して救出のために米国との緊密な協議を行っているようだが、まだやるべきことはある。」
とあります。
これは安倍政権は最低一人以上の被害者の生存情報を得ているという意味にしかとることはできませんが、そのような解釈でよいのでしょうか?

それに対する西岡会長による回答。
「これは私の推測です。政府はそのような情報は出しませんので。逆に今ここまでできてないと怒るぞと(笑)」

ただの一人の生存情報も確言することができずに、全ては「推測」とは!
問題はその場に拉致被害者家族が大勢いたにも関わらず、一人も何の反応も示さなかったことです。
この期に及んでの「全ては推測」という言葉を、ただ聞き流すだけの拉致関係者たちの姿には、心の底から驚愕しました。
こんな状態で、よく目標は「拉致被害者の全員一括帰国」などと言えたものです。
これが生存謀略以外の何だというのでしょうか?

繰り返し言いますが、拉致被害者は全員死んでいると言いたい訳ではありません。
くどいですが、そのようなことは誰にも分かりません。
一方で、拉致被害者家族が「必ず生きている」という強い期待をもつのは当たり前のことです。

しかし「救う」会を名乗っている団体が、あやふやな情報をまるで絶対の真理のように装い、それを根拠に全ての行動を行っているとすれば、それは拉致被害者救出活動の妨げ以外のなにものでもないでしょう。

拉致問題をただ政治利用しているだけの安倍総理を異常なまでに支持し続けること。
それは救う会も家族会も同様です。

③家族会
ここで2013年12月26日の産経デジタルNEWSの記事「安倍首相就任一年 拉致家族、進展ない中「でも安倍さんしかいない」」を見てみましょう。
「有本恵子さんの母、嘉代子さんは「どないなっているのか全然わかりません」と話す。それでも「安倍政権のときに解決しなかったら、無理なんじゃないかと思っている」と嘉代子さんは話す。
拉致問題が今ほど認識されていないころから、安倍首相は解決に向けた活動に取り組み、官房副長官として平成14年9月の日朝首脳会談にも同行した経験もあるからだ。
有本さんだけでなく、ほかの家族も安倍首相に対し、同様の思いを抱いている。横田めぐみさんの母、早紀江さんは「絶対に何とかしてくださると信じている。」家族会代表の飯塚繁雄さんも「安倍さんに代わる人はいない」と信頼は揺るがない。」

さて現在はどうなっているでしょうか?

2018年3月29日 本間勝(田口八重子さん兄)氏発言。
「私は今の国会を見ていると、森友学園であまりにも時間を取って、そして安倍総理を引きずり降ろそうとしている。今この大事な時期に、安倍総理には外交問題に専念させてほしい。」
2018年3月30日 飯塚繁男氏発言。
「総理は若干やせて疲れていましたが、この拉致問題の解決についてまだ意思が強い。私たちとしては、もう安倍さんしかいないという思いで今後を期待したいと思います。」

2018年4月22日 内田美津夫(寺越昭二さん三男)氏発言。
「私は、小泉政権、第一次安倍政権、そして今の安倍政権と、ずっと安倍総理大臣を見てきました。拉致問題を解決できるのはやはり安倍総理しかいないと私は思っています。
 私が言えることは、「安倍総理を信頼していますから、是非頑張ってください」ということで、これを先ほど言いました。ここにいる家族の皆さん、国民の皆さん、安倍総理を信頼して拉致問題を解決するようにお願いしたいと思っています。」

・・・これは一体なんなのでしょう。

Ⅶ ほぼ永遠に「生き続ける」ことになっている拉致被害者

新しい視点
06 /16 2018
Ⅶ ほぼ永遠に「生き続ける」ことになっている拉致被害者

①横田めぐみさんの「遺骨」DNA鑑定
 2004年11月、北朝鮮は横田めぐみさんのものとされる「遺骨」を提出してきました。
その遺骨は1200℃という高温で焼かれたものでした。それ故、警視庁の科学警察研究所では、DNAそのものの抽出ができませんでした。
しかし、帝京大学の吉井富夫講師は、めぐみさんのへその緒から抽出したミトコンドリアDNAと比較し、
北朝鮮から提出さらた遺骨は、めぐみさんのものではないと発表したのです。
その際、吉井氏はサンプルは全て使いきったので、再鑑定はできない、とも話しをしています。又、遺骨は素手で触れたならその人のDNAが付着する(汚染)される可能性もあり、そのような場合、完全に汚染を除去することはできないとも話しています。
この結果に対し、北朝鮮は「1200℃の高温で焼かれた骨からDNAは検出できない。日本の発表は捏造である。」と声明を出しています。(2005.1.26)
又、科学雑誌Nature2005.2.3の記事では、この吉井氏の鑑定に疑義を呈しています。更に、吉井氏は、警察経験が無いにも関わらず、2005年3月警視庁科捜研の法医課長として採用されています。警察が、外部の人間を管理職採用することは異例なことです。以後、公務員となり公式なコメントを勝手に発表ができない状態になっています。
 日本政府の公式見解は、「横田めぐみさんの遺骨とされるものは偽物。よって、めぐみさんは生存している」です。

②北朝鮮から「出されるもの」は全て捏造 ― 故に、被害者は「生存」している
 北朝鮮から提出された「遺骨」はめぐみさんのものだけではありません。2002年には
松木薫さんの「遺骨」も提出されています。これも鑑定の結果、別人のものであるとされています。
北朝鮮から出された「死亡診断書」も5人の帰国者の証言、脱北者の証言等から、「死亡」とされた年月日以降、生存していることが判明したケースがあると言われています。北朝鮮から提出された偽の「死亡診断書」「遺骨」から、北朝鮮から提出される情報は嘘ばかりで信用できない、ということが日本政府、救う会、家族会の共通認識となっています。
 そして、彼らは今後被害者の「遺骨」とされるものが提出されたとしても、それは「被害者の腕を折って本物の遺骨」を造ったものかもしれないと事前に予防線を張る発言を繰り返しています。
 つまり、本当に被害者が死亡していたとして、本当の「死亡診断書・遺骨」が提出されることがあったとしても、それ以前に偽物を出しているので、今回も偽物であると断言することができるのです。あるいは、「生存している被害者の体の一部を切り取って骨にしたものを出して来たので、被害者は生存している」と言えるのです。
拉致被害者は、「死亡診断書・遺骨」が提出されようと、偽物が提出されたに過ぎないので、「生存」していることになるのです。又、数年前の目撃情報を理由に「生きている」ということができるのです。数年前に生存していたことが確実であったとしても「今、現在」も生存しているという確証はありません。
 拉致被害者は、「死亡」することは無く、「生存」し続ける存在なのです。しかし、実際に被害者の生死を確実に知っているのは、北朝鮮だけなのです。日本政府、救う会、家族会はあくまで、「生存していることにする」と仮定すること以外できません。
それは正確には、「生存しているかもしれないし、死亡しているかもしれない」という50%ずつの可能性でしかないはずです。
「生存していて欲しい」という家族の希望は理解できます。
しかし、日本政府や救う会は「生存している場合は救出する」が「死亡していた場合には、どうするのか」を考えねばなりません。
金銭による賠償、北朝鮮に残されている被害者の北朝鮮での家族(たとえばウンギョンさん一家のような)との面会などを進めていかなければならないのではないでしょうか。
さて2004年12月、当時幹事長代理だった安倍晋三氏は以下の発言をしています。
「これからは証拠を出せと言うと危険だ。生存者を返せと言うべきだ。彼らは生きている人の腕を折って本物の遺骨をつくることすらやりかねない」
頭から「生きている」と決めつけ、証拠の有無など問題にしていません。
どういう根拠があって「やりかねない」と言っているのか不明ですが(そんな実例があるのでしょうか?)、そこまで残虐な国だと認識しているのに、それから13年以上たっても、その残虐な国で拉致被害者が全員生き続けていると言い続けるのには、相当な無理があると言わざるを得ません。

③拉致被害者は生存していなければならない
被害者をほぼ永遠に生存していることにすることは、拉致問題の解決がほぼ永遠にできないということです。
本当に死亡している被害者がいたなら、返すことはできないからです。
「即時全員一括帰国」という譲れない条件を欠くことは許されないからです。(「全員」の範囲が不明確な以上、そもそも全員生存という言葉自体が現実性を欠いています)
家族が生存に希望を持つことは当然のことです。
政府、救う会が生存に拘り、家族に「即時全員一括帰国以外は認めない」と言わせることのメリットは何でしょうか。
拉致問題を終わらせないこと、これ以外に考えられません。
政治利用するためには、解決しては困るのです。
北朝鮮という敵国、悪の国が隣国に存在しなければ、防衛費増強、憲法改正等に大義名分を与える根拠が薄弱になります。
解決し、国交正常化すれば、莫大な賠償金を北朝鮮に支払わなければならなくなるでしょう。国民の反発も予想されます。2002年の小泉訪朝時とは比較にならないほど、北朝鮮憎悪、在日韓国・朝鮮人へのヘイト感情は高まっている現状、国交正常化交渉と聞いただけで、世論が反発することは想像できることです。
 つまり、拉致被害者には、生存していてもらわなければ困るのです。そして、家族に「即時全員一括帰国」以外は認めない、と言い続けてもらわなければ困るのです。
誰が?
拉致問題を利用している日本政府、安倍総理、救出運動を続けたい救う会がです。
分かりやすい例をあげましょう。
2018年3月29日の「チャンス到来、金正恩に拉致被害者帰国を迫れ!」緊急集会の決議文(A4の紙片面1枚の文章)の中で「全被害者の一括帰国」という言葉が6回出てきます。
そしてそのほぼ一カ月後の4月22日の国民集会の決議文では、それが「全拉致被害者の即時一括帰国」に変わっています。
なぜ「即時」を入れる必要があったのでしょう。
南北・米朝首脳会談が近づき、何らかのかたちで拉致問題が「解決」される可能性が高くなってきたので、慌てて「解決」のためのハードルをあげたのではないですか?

Serenity Prayer

某県「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出する〇〇の会)元幹事。
脱退後に意見の対立から除名されたらしい。(正式な通告はなかった)
ウヨク的思考を経て中立に物事を見て、判断し、発言する方向へ変わる。
中立の立場から今の拉致問題のあり方に疑問を持つ。
拉致問題に限らず、考え方はヒューマニズムに立つ。